理事長のご挨拶

 この度、2017年9月に開催された日本生物学的精神医学会理事会において、理事長に選出され就任致しましたので、ご挨拶申し上げます。
 我が国の精神障害の患者数は300万人を超え、さらに精神障害は大きな社会的損失の要因であることも踏まえて、2011年に5大疾病の1つと位置づけられました。様々な疾病が個人や社会にもたらす影響には、寿命が短くなることに加えて、日々の生活や社会的な活動に支障が生じ、その方の人生に変化が生じる、などがあります。この疾病が及ぼす、生命、生活、人生への影響を考慮し、世界保健機構(WHO)が算出した障害調整生命年(DALY)によると、我が国において、あらゆる疾病の中で精神障害は最も大きな社会的な損失をもたらすことが判明し、医学・医療の最大の標的と考えられております。
 精神障害は医学・医療の最大の標的と位置づけられましたが、その理解や診断、治療法は必ずしも十分とは言えない現状があります。精神障害はどの様にして発症し(発症に到るメカニズム)、発症の後に何が起きているのか(発症後のメカニズム)が不明で、その結果、周囲や社会の理解も深まらず、診断や治療法を開発する方向性も定まりません。この様な状況を改善して、精神障害がもたらす種々の問題を克服するには、発症に到るメカニズムと発症後のメカニズムを明らかにすることが不可欠と考えております。
 日本生物学的精神医学会は、精神障害がどの様にして発症し、発症後に何が起きているのか、精神症状と脳や身体のミクロからマクロレベルに到る構造と機能との関係を探索することで、精神障害の理解、診断と治療に活かせる証左を得ることを目指して参ります。また得られた証左を、当事者・ご家族はもとより広く社会に伝えること、さらに新たな証左を得るために次世代の研究者及び臨床医を育てる活動、を実施して参ります。この様な活動においては、日本精神神経学会をはじめとする精神科関連諸学会や、日本脳科学関連学会連合とも共同・連携をして参ります。
 本学会のこれまでの成果を更に発展させ、より一層の社会貢献に邁進したいと考えております。本学会会員の方々をはじめ皆様のご支援、ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

日本生物学的精神医学会理事長
尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学分野)