理事長のご挨拶

日本生物学的精神医学会は、統合失調症・気分障害・不安障害を初めとした精神疾患の、画期的な診断・治療法や発症・再発の予防法を開発することを目指して、病因・病態を生物学的方法で解明するため、精神科医が中心となり1979年に設立されました。精神疾患は、最も患者さんの多い身近な病気のひとつであり、その克服は、国内外で重点的に取り組むべき喫緊の課題として位置づけられています。我が国では、政府によってガン、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病とともに、5大疾患に取り上げられ、様々な角度からの研究に対して積極的に国家の支援が図られています。したがって、本学会の役割はきわめて重要です。
一方、近年、分子生物学、細胞生物学、遺伝学、解剖学、生理学、生化学、薬理学、心理学、行動科学や、脳画像解析、光学・機器分析技術等の飛躍的進歩によって、精神機能とその病態の解析の可能性が格段に拡大した結果、神経科学の様々な領域の基礎研究者が精神疾患の研究に携わる変化が生まれ、臨床的な視点と基礎研究の橋渡し役として、本学会への期待が高まっています。このような状況は、精神疾患の研究が新たなステージに達したことを示しています。すなわち、精神疾患の診断・治療に神経科学研究の成果を還元することが求められていると同時に、精神医学と他の神経科学の諸領域が一層連携を強め、難治性症状・生物学的診断のほか、山積する難題に取り組むことが不可欠になったと言えましょう。こうした方向性を継続的に大きく発展させるには、より多くの若い世代の参画を促すことが、是非とも必要です。
このため、社会や医学・基礎科学の諸領域からの要請に十分応えられるよう、会員の皆様とともに、原点である精神疾患の生物学的研究を進歩させることに加え、国内の他の基礎系・臨床系学会との有機的繋がりを深め、精神科の実地臨床に直接役立つ情報と、精神疾患・神経科学の研究の先端を拓く手がかりを豊富に提供する、新たな活動を展開したいと考えています。また、これらの活動を通して、海外の生物学的精神医学会のほか関連の学会にも協力してまいります。本学会に、幅広いご理解とご参加・ご支援をいただきますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。

日本生物学的精神医学会理事長
西川 徹(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学分野)