理事長のご挨拶
大阪大学精神医学武田雅俊
この度、倉知正佳理事長の後を継いで、日本生物学的精神医学会の理事長を務めさせていただくことになりました。本学会は1974年に設立され、満田、鳩谷、中澤、町山、仮屋、融、高橋、高橋、佐藤、倉知の諸先生に率いられて着実に発展してまいりました。私は高橋清久理事長時代には将来計画推進委員会、佐藤光源理事長時代には国際交流委員会、倉知理事長時代には総務委員会の中で仕事をさせていただきましたが、このたび理事長をお引き受けするにあたり、本学会の歴史を再確認し、その責任の重さを感じております。甚だ微力ではありますが、理事、評議員をはじめ会員の皆様のご協力とご支援のもとに本学会の発展に尽くしていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。今期理事会の活動方針を、研究推進、うつ病対策、会員数、国際交流、関連学会との協調とにまとめて述べさせていただき、理事長就任のご挨拶とさせていただきます。
1. 研究推進について
本学会は、精神疾患の生物学的研究を推進するために設立されました。本学会の意義は、わが国の生物精神の研究推進にいかに役立つかということにかかっています。生物精神研究振興WG(加藤忠史委員長)は、脳科学委員会の答申案に対する要望書を提出するなどして、精神医学領域の研究の重要性を訴えてきましたが、残念ながら必ずしも広く理解されているとは言い難い状況です。 その大きな理由として、神経疾患はニューロサイエンスの研究手法により、精神疾患は心理社会的研究手法による、との安直な二分法が識者の間にも流布しており、精神疾患の生物学的研究の重要性が抜け落ちていることが考えられます。 生物精神研究振興WGのこれまでの活動を支えるとともに、今まで以上に精神疾患の生物学的研究の重要性を訴えていきたいと思います。また、本学会独自の活動として、研究助成金の獲得や国内外の共同研究のコーディネイトにも力を注いでいきたいと思います。2. うつ病対策委員会について
昨今、うつ病が社会問題となっていますが、うつ病はまだまだ正しく理解されているとは言えず、政治家が「うつ病で休む教員が多いが、国会議員には一人もいない。気が弱ければ務まらない」などと、うつ病に対する誤解を招くような発言をしたと報じられたこともありました。このような誤解はしばしば見られ、学会としては、さらに理解を深める努力をしていかねばなりません。 そこで、本学会では、日本うつ病学会および日本心身医学会との協調によるうつ病対策委員会を設置して、うつ病対策の提言をとりまとめました。うつ病対策委員会
神庭重信(委員長)、加藤忠史、笠井清登、小山司、山脇成人、尾崎紀夫、福田正人、功刀浩、西田淳志、白川治、野村総一郎(日本うつ病学会)、久保千春(日本心身医学会)、元村直靖うつ病対策の総合的提言
3. 会員数について
本学会の会員数は、ここ数年は1500−1600名程度で一定しています。本学会の発展のためには、会員数の増加、さらには、若い人の加入を推し進めることが必要です。若い人が加入しやすい学会となるようにいろいろな方策を考えていきたいと思います。4. 国際交流について
平成21年3月1日の理事会では、WFSBP大会の日本誘致を目指すことが決定されました。この理事会の決定を受けて、早速にWFSBPワーキンググループ(倉知、武田、神庭、尾崎、平安)を設置し、第11回WFSBP World Congress申請書を作成して3月25日にWFSBP本部に送りました。提案書では、2013年6月に京都にて第11回WFSBP World Congressを開催との内容を記載しています。これは2013年の立候補の締め切りが2009年3月30日となっていたためであります。 WFSBP (World Federation of Societies of Biological Psychiatry)は、1974年に設立された生物学的精神医学会の世界連合です。日本生物学的精神医学会はWFSBPに対応する学会として設立されたのですが、約35年前のWFSBPの設立当初には、満田先生、福田先生を中心とした日本の研究者が大きな働きをされました。このような経過もあり WFSBPの加盟団体のなかで日本生物学的精神医学会は今でも最大の会員数を誇っています。WFSBPの執行部は7名で構成されていますが、ここ数年は神庭重信先生、尾崎紀夫先生が執行部の中で仕事をされてきました。WFSBPは2年ごとにWorld Congressを開催します。ご承知の通り2009年はパリ、2011年はプラハでの開催が決まっています。そして、2013年の開催地が2009年秋に決定することになっています。 私は、WFSBPの中での日本生物学的精神医学会の役割は今まで以上に重要になってくるのだろうと思っています。いろいろな分野でアメリカ、ヨーロッパ、アジアの三極への分化集約が見られますが、研究人口、論文数、研究レベルのいずれで見ても、わが国を中心としたアジア地域の生物学的精神医学の活動は一定の評価を得るに十分なレベルにあります。これまでヨーロッパを中心として活動してきたWFSBPが本当の意味での世界連合として機能していくためには、わが国を中心としたアジア地域の積極的な関与が必要だと思われるからです。 WFSBPはこれまで十回の World Congressを開催してきましたが、リストに見られますように第一回のブエノスアイレス、第四回のフィラデルフィア以外はすべてヨーロッパでの開催でありました。このような偏りを糺すためにも2013年の京都での開催を強く訴えていきたいと思います。ご理解とご支援をお願いいたします。WFSBP World Congressの開催地
- 1974年
- 第一回ブェノスアイリス(アルジェンチン)
- 1978年
- 第二回バルセロナ(スペイン)
- 1981年
- 第三回ストックホルム(スウーデン)
- 1985年
- 第四回フイラデルフィア(アメリカ)
- 1991年
- 第五回フィレンツェ(イタリア)
- 1997年
- 第六回ニース(フランス)
- 2001年
- 第七回ベルリン(ドイツ)
- 2005年
- 第八回ウィーン(オーストリア)
- 2009年
- 第九回パリ(フランス)
- 2011年
- 第十回プラハ(チェコ)
- 2013年
- 第十一回京都(日本)が立候補
5. 関連学会との協調について
今期理事会では関連学会対応委員会を新たに設置いたしました。これまで、日本生物学的精神学会学術大会は、平成16年から19年まで、東京、大阪、名古屋、札幌と4年間日本神経精神薬理学会との合同年会を開催してきました。平成17年の大阪大会では英語セッションを設けアジアからの100名が参加しました。平成18年度の名古屋大会は、日本神経精神薬理学会、日本神経化学会との合同開催でした。そして平成20年にはAsia Pacific Congressが富山で開催されましたが、このときは日本神経化学会との連合開催でした。このような他学会との合同・連合開催を経験しながら、学術大会のあり方も変化してきましたが、平成21年度は京都での単独開催に戻り、平成22年度の小倉の大会ではアルコール関連学会、ニコチン研究会との合同開催が予定されています。これらの合同開催は、本学会員にとっては、基礎医学や薬学などの分野の研究者と交流する貴重な機会となったことは間違いありません。これからの本学会の方向としては、このような国内外における幅広い活動を継続発展させていくことが重要と思われます。本学会の活動がより活発となるような他学会との合同・連合を工夫したいと思っています。 本学会が、国内外に、基礎にも臨床にも、そして何よりも会員に開かれた学会として発展していくように努力していく所存でありますので、皆様方のご協力と積極的なご参加を何卒よろしくお願い申し上げます。大阪大学精神医学
武田雅俊
